第32章 【ゲキタイ】
「あんた達、いい加減にしなさいよ!」
そう突然私をかばう声に目を見開く。
そこにいたのは市川さんで、小宮山さん、私、除光液借りてきたからっ!そう言って私の前にそれを置く。
え……?って思って彼女を見ると、机はこれで消せるよ!そう言って彼女はティッシュに除光液を染み込ませる。
市川さん、水かけられた時と同じように気にかけてくれるんだって思って、でも、そんなことしたらあの子達に睨まれちゃうよって思って、それから、どうせ消したってまたすぐに落書きされるからって思って、頭の中がパニックになる。
「よ、余計なことしないでくださいっ!」
うまく考えがまとまらないまま慌てて発したのはそんな酷い言葉で、あっ……って慌てて口を塞いで、恐る恐る市川さんを見上げると、彼女は顔を固まらせていてた。
違う……そう言いたいんじゃないの……
「小宮山、ひでー」
「せっかく美沙が消そうとしてくれているのにね」
そんな私を責める言葉が教室内から沸き起こり、ギュッと膝の上で拳を握りしめながら下唇を噛む。
言い直さなきゃ、そう思いながらも言葉が出てこなくて、またやっちゃったって自己嫌悪する。
「余計なことじゃないよ?」
そう市川さんが静かな声でそう私に声をかけるから、え?って顔を上げて彼女を見ると、小宮山さん、こんな机じゃ悲しいよ?そう言って机を拭き始める。
「でも……消してもどうせすぐに、書かれますから……」
そう目を泳がせて言うと、そしたらまた消せばいい、そう言って市川さんは、教室の隅でこちらを睨みつけている女子達を睨み返す。
「何度だって消せばいい!こんなの、いくら何でも悪質すぎる!見て見ぬ振りするみんなだって同じ!第一、酷いのは小宮山さんじゃないでしょ!?」
その市川さんの言葉に教室内がシーンと静まり返る。
胸の奥が熱くなり、にじむ涙をこっそり拭う。
すると教室の隅の女子達は、なによ、私達がやった証拠でもあるの!?そう言って私達の元にゆっくり近づいてきた。