第32章 【ゲキタイ】
時間になると、本当に大丈夫だから、そう心配そうな顔をする母に笑顔を向けて学校へとむかう。
……大丈夫だよね……?
いつものようにケロッとして、小宮山ーって甘えてくれるよね……?
でも何でかな……胸騒ぎがする……
嫌な予感がして仕方がない……
ダメ、考えたって仕方がないんだから、考えるのはやめよう。
どうして英二くんの事となると、こんなにウジウジするんだろう……そう思いながらふーっと大きなため息をついて、ふるふると首を横に振る。
学校も近くなってきて、青学の生徒達の視線を感じる。
弱さを見せたら不二くんとの写真のことを気にしてると思われる。
堂々としていないと……そう顔を上げて気を引き締める。
「ほら、小宮山さんだよ……」
「本当に不二くんとつき合ってるのかな?」
そうヒソヒソと噂する声と突き刺さるような視線の中、昇降口につくと自分の靴箱の前で大きく息をすう。
上靴……履ける状態かな……?
とりあえず定番だからね……なんて思いながら平気な顔をしてふたを開ける。
……あー……やっぱり……
案の定、上靴には沢山の落書きがされていて、それを取り出すと落書き以外の被害を確認する。
画鋲なんか刺さってないでしょうね……?
落書きは気にならないけれど、流石に痛いのはイヤだ、そう思ってぐるりと回して見てもとりあえずは大丈夫そうで、その落書きだらけの上靴に履き替える。
捨てられてたり履けない状態を考えて予備は持ってきたけれど、これぐらいでそれを下ろしてたらきりないものね……そう思いながら、今まで履いてきた靴を紙袋に入れて持ち歩く。
置いとくと帰るときに困る可能性が高いからね……
そんな私の一連の様子を、興味本位で見ていた野次馬の生徒達が、さすが小宮山璃音、強えー……そう口々に声を上げた。