第31章 【シンユウ】
私が外部受験をすることは、絶対誰にも知られたくなくて、学校の先生にもギリギリまで言わないことにした。
誰にも分からないようにこっそり準備を進めた。
もしバレたら何を言われるか分からないし、進学する高校を知られるのも避けたかった。
受験にむけて忙しく準備を進めながら、学校でのことは出来るだけ気にしないようにしていた。
イジメはますますエスカレートしていたけれど、無反応、無抵抗でいるのが一番被害が少なかった。
慣れというものは凄いもので、生卵やトマトが飛んできても動じずにいられるようになった。
私って神経図太かったんだな、なんて新たな自分を発見した。
その分、ナオちゃんからの攻撃は何時まで経っても辛すぎて、私がいかにナオちゃんが大好きだったかを思い知らされた。
「璃音、一緒に帰ろう!」
そんなある日、授業が終わってすぐに帰ろうとする私の腕に絡みつきながら、ナオちゃんがそう笑いかけた。
その笑顔に恐怖しながらも、抵抗することも出来ずついていくと、ナオちゃんは人気のない北校舎のトイレへと私を誘導した。
「おまたせー♪璃音、連れてきたよー!」
そう言って無理矢理連れ込まれたトイレには、以前、私と仲良くしてくれたかつての友人達が、ニヤニヤしながらこちらを見て待っていた。
その雰囲気にすぐに危機感を覚えるも、足がすくんで動くことが出来なくて、恐怖で顔をこわばらせる私に、ダメじゃない、笑わなきゃ、あれほど言ったでしょ?そうナオちゃんが言ってみんながクスクス笑った。
「ナオー、動画撮る?」
「ソレも面白いけどダメ、私達の声や姿が写り込んだら自分達の首絞めるから」
「そっかー、残念」
出入り口に立たれて逃げ道をふさがれると、全身から冷や汗をかいた。
私、今日は急ぐから……そう目を伏せる私の顔をナオちゃんは覗き込んで、そんな事言わないで私達につき合ってよ?そう言ってニヤリと笑った。
その笑顔に息を飲んだ次の瞬間、私のお腹に強い衝撃と激しい痛みが走った。