第31章 【シンユウ】
東京に戻るとまた大量の嫌がらせメールやLINEの攻撃が待っていた。
毎日毎日、全く反応しない私に飽きもせずよく送るなって思った。
その無駄な時間、計算式のひとつでも解けばいいのに、なんて思った。
嫌がらせメッセージは沢山届いたけど、香月くんからの連絡は一切なかった。
予想していたことだけど、ため息と胸の痛みが止まらなかった。
自分から連絡することも考えたけれど、最後にみた香月くんの目を思い出すと、どうしても連絡なんかできなかった。
停学があけて学校が再開すると、本当に地獄のようだった。
登校初日、校門を抜けるとすぐに私を待っていたのは、目を潤ませたナオちゃんだった。
「璃音!心配してたんだから……!」
涙を流しながら歪んだ口元で私に抱きつく彼女に、なるほど、最高のパフォーマンスだなって思った。
犯罪を犯した親友を気遣う、心優しい水島ナオちゃんって、ここまで来ると感心してしまった。
また一緒に楽しもうね!そう言って笑うナオちゃんの笑顔に、私は楽しくないけどね、そう思ってため息をついた。
毎日、落書きだらけの机で、落書きだらけの教科書とノートを開いて授業を受けた。
そんな私を見て見ぬ振りする先生方もみんな敵だった。
生徒会執行部にもいられなくなって、香月くんと会うこともなくなった。
そんな私にいつもナオちゃんは寄り添って、側にいて白々しい友情ごっこを演じてくれた。
将来、女優になればいいのに、なんて無表情で過ごしながら、心の中でずっと思っていた。
平日の地獄の日々とは違って、休日は心休まる幸せな時間だった。
ナオちゃんの手口は、あくまでも表面上は「献身的な心優しい親友」だから、一度お母さんに頼んで帰ってもらって以来、家に押し掛けてくることはなくて、それだけは良かったなって思った。