第31章 【シンユウ】
学校を休んでいる間と夏休みに入ってからも、何度か先生から連絡があった。
お母さんが対応したところ、夏休み明けから10日間は出席停止という名の停学処分になったらしい。
なんだ、退学じゃないんだ、いっそ退学になれば良かったのに……なんてそのお母さんの電話の声を聞いていた。
電話でもお母さんは何度も私の無実を訴えてくれた。
でもナオちゃんの証言と、私が否定しなかった事もあり、ハッキング事件は小宮山璃音の犯行、と言うことで完結したらしい。
「お母さん、もういいよ……」
そうつぶやく私に、ダメよ!って言いかけたお母さんは、私の憔悴しきった様子を見て、何も言わずに抱きしめてくれた。
香月くんより、ナオちゃんより、その腕の中はとても暖かくて涙があふれた。
毎日のように沢山の誹謗中傷のLINEやメールが届いた。
いっそアドレス変更してLINEもやめてしまおうかと思ったけれど、香月くんから連絡が来るかもしれないと思うと退会する勇気もなかった。
さんざん嫌がらせメッセージを無視していたら、ナオちゃんとかつての友人達が心配を装って家に押し掛けてきた。
お母さんに帰るように言ってもらったら、学校再会が楽しみだね!ってメッセージが届いて、なおさら憂鬱になった。
「璃音!お父さんに会いに行きましょう!」
夏休みも中盤にさしかかった頃、毎日引きこもる私に、突然、お母さんがそう明るい声で言い出した。
お父さんにってイギリス……?そう驚いてきくと、そう、お母さん、お父さんに会いたくなっちゃったの、璃音もつき合ってね?なんて言って優しく笑うお母さんに少し頬が緩んだ。
さ、そうと決まれば準備、準備!、そう言って嬉しそうに背中を向けたお母さんの目から、涙がこぼれ落ちるのが見えた。
その涙に、今更だけど自分がどれほど心配をかけていたかに気がついて、このままじゃダメ、そう思って顔を上げた。