第6章 【ヒョウヘン】
「小宮山ってさ、いい趣味してるよなー?」
そう私の手をつかんだまま、彼がそう言うから、何のこと?と目を伏せてそう答える。
「うーんと、覗き?」
「の、覗き!?……そんなんじゃ!!」
菊丸くん、やっぱりあの時のこと、バレていたんだ!
わかっていて、今まで何でもないふりしてたんだ!
心臓がバクバクする。
彼に掴まれた腕が痛い。
足がガクガクと震えてとまらない。
そんな私に、立派な覗きだって、そう彼はにやりと笑う。
「は、離して!!」
「やーだよん♪」
キッと彼の顔を睨みつける。
怖くて必死に掴まれた手を引いて抵抗する。
それでも男の人の力にかなうはずもなく、その手はピクリとも動かないけれど……
「オレ、あん時のほうがいいにゃー」
「……え……?」
そう思わず顔を上げると、彼がさっと私の三つ編みをほどき、それからメガネを取り上げる。
「やっぱ、すげー、キレーな顔してんじゃん?なんで隠してんの?」
そう言って彼は私の髪を一つまみ手に取ると、それにそっと唇を落とした。
「嫌っ!!」
カアッと頬が熱くなり、慌てて拘束されていない方の手でそれを振り払うと、今度はその手もサッと彼に掴まれてしまう。
それから勢いよく引き寄せられたと思った次の瞬間、ぐるりと倉庫内の景色が回った。
え……?
目の前には彼の歪んだ笑顔……
その向こうには薄暗く汚れた天井……
背中には埃っぽい運動用マット……
これって……
気が付くと私は両手を掴まれたまま、彼によって無理やり押し倒されていた。