第6章 【ヒョウヘン】
「な、に……して……?」
「何って……鍵の確認じゃん?」
心臓がドクンと大きく脈を打つ。
あの日の光景が一気に脳裏によみがえる。
あの公園で目があったあのときの、あの怖い笑顔の菊丸くんがそこにいて、私をみて薄ら笑いを浮かべている。
目をそらしたいのに、その視線から逃れることが出来なくて、彼のその歪んだ笑顔に身体を震わせた。
「あ……だったら……もう開けて……ください……」
そう脅える私の様子に菊丸くんはニヤリと笑い、一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。
そんな彼から逃げるように、奥へと距離を保って後ずさりをする。
「小宮山さ~、なんでそんなに脅えてんのさ?」
「お……脅えてなんか……」
「ふーん?……オレにはすんげー怖がってるように見えんだけど?」
怖い……本当はすごく怖い。
ガラッと変わった表情も、その醸し出す雰囲気も、小宮山さんから小宮山に変わった呼び方も、いつもより低くなった声も……彼のすべてが怖くて仕方がない。
「……鍵を……開けてください……」
「いいよん、でも後でね?」
その恐怖に耐えられなくて、開けてください!!、そう叫ぶと入口にむかって駆け足で近づき、急いで開けようと慌てて鍵に手を伸ばす。
「だーめ、後でって言ったじゃん?」
手を伸ばした瞬間、私の手はそう言った彼によって掴まれてしまい、恐る恐る彼を見上げると、菊丸くんはまたあの歪んだ笑顔で私を見下ろしていた。