第31章 【シンユウ】
「本当、酷いよねー!璃音がそんなことするはずないのにさ!」
一学期もあと数日を残すばかりとなったある日、生徒会室でナオちゃんと一緒に香月くんを待っていた。
ナオちゃんは相変わらずプリプリ怒ってくれて、そんな彼女の気持ちが嬉しくて、もうすぐ香月くんと会える嬉しさもあって、その時は幸せな気持ちだった。
「それにしても誰だろうね!職員室に手紙、送りつけたやつ!」
そのナオちゃんの言葉に、ピクッと身体を固まらせた。
その手紙の話は誰にもしていなかった。
そんな手紙が来るほど嫌われているって、ナオちゃんと香月くんにだけは知られたくなかった。
「な、んで、知ってるの……?」
信じられない気持ちで震える胸をおさえ、必死に声に出した。
そんな手紙の話、先生方から生徒に漏れるはずなくて、その証拠にそんな手紙の話をしてる生徒はいなくて、私が誰にも言ってない以上、他に知っているのは、手紙を送りつけた本人だけで……
……まさか……違うよね……?
何かの間違いだよね……?そう自分の勘が外れてくれることを震える拳を握りしめながら祈った。
だけど、しまったというような顔をしたナオちゃんは、次の瞬間、あーあ、バレちゃった、そう言って今まで見せたことのない歪んだ笑顔を見せた。
「やっぱり、ナオちゃん、なの……?」
「そうだよー、私が璃音を陥れた真犯人!」
「だって……ハッキングは生徒会室のパソコンで……」
「気づかなかった?ここで香月くんと3人で模試の話をした日、私、あの窓の鍵、こっそり開けといたんだー」
そう言ってナオちゃんは一番端の目立たない窓を指差し、ついでにパソコンのパスワードも盗み見してたってわけ、なんて言ってまた笑った。
「だいたい、璃音の制服にUSBメモリ入れれるのなんて、私か香月くんしかいないのに、璃音、全然気づかないんだもん!」
可笑しくて笑い堪えるのに必死だったよー!そう言ってナオちゃんは私の顔をのぞき込みながらクスクス笑った。