第31章 【シンユウ】
ある日、生徒会室で仕事をこなしていると、会長の香月くんと2人きりになった。
香月くんは端整な顔立ちと、学年首席でスポーツ万能で、しかもお家のお仕事の関係でずっと海外に住んでいた帰国子女ということもあり、学校中の女子から絶大な人気があった。
香月くんはよく住んでいた海外の話をしてくれて、そんな彼との会話は凄く楽しくて、彼が話してくれる父のいるイギリスの話や、私の好きなグリム童話のドイツの話なんかを、いつも目を輝かせて聞いていた。
その日もそんな会話をしながらパソコンに向かって作業をしていると、小宮山さん、会計報告書、出してもらえる?なんて香月くんに頼まれて、あるはずのフォルダの中を探したけれど何故か見つからなかった。
すると、ちょっとごめんね、そう言って香月くんが私の後ろからマウスを操作して画面を覗き込むから、背中に彼の身体が触れるその距離に凄くドキドキした。
それからドキドキが止まらなくて、息苦しくなって、勝手に顔が赤くなって、そんな私の様子に気がついた香月くんは少し頬を染めて、前から小宮山さんのこと、いいなって思っていたんだ、そうはにかみながら言った。
香月くんからの告白は他の誰からの告白よりずっと嬉しくて、でも恥ずかしくて何も言えなくて、真っ赤な顔をしてギュッと瞳を閉じると、すぐに一瞬だけ唇に何かが触れた。
え?って思って慌てて目を開けると、そこには、凄く恥ずかしそうに唇を手で覆う香月くんがいて、ご、ごめん、なんて真っ赤な顔で謝られて、あって思って、慌てて首を横に振った。
それから生徒会室で2人きりになると、香月くんとキスするようになった。
それは唇が触れるだけのものだったけど、当時の私にはそれが精一杯で、そんな私に香月くんも、ゆっくりでいいよって合わせてくれていた。
香月くんはいつも抱き寄せてくれると、私の髪をキレイな髪って褒めてくれて、そんな風に彼に優しく髪を撫でられるのが大好きだった。