第31章 【シンユウ】
そんなことがあってから、ナオちゃんと2人の時は笑顔を作れるようになった。
相変わらず話をするのは苦手だったけど、それでも彼女の話に笑顔で相槌を打てるようになった。
「ナオ!駅前のショッピングモールに寄って帰ろうよ!」
「いいよー、ほら、璃音も一緒に!いいよね?」
え?って戸惑う私に、同じように戸惑うクラスメイト達の後ろで、ナオちゃんは自分の両頬を人差し指でクイッと上げたから、笑顔?そう思ってぎこちない笑顔を作った。
すると、みんな驚いた顔をしたけれど、うん、小宮山さんも一緒に行こう!そう言って笑顔を返してくれた。
戸惑いながらナオちゃんの顔を見ると、彼女はクラスメイト達の後ろで、音が鳴らない小さい拍手をしてくれた。
はじめての寄り道に戸惑いながら、みんなの後についていったショッピングモールで、雑貨屋さんを訪れた。
みんなそれぞれ、ワイワイ盛り上がって店内をみる中、みんなから少し離れて商品を眺めていた。
あ、これ、可愛い……そうお花をかたどったスワロフスキーの携帯カバーを手に取る私に、あ、可愛い!そうナオちゃんが声をかけた。
璃音、こういうの好きなの?そう言うナオちゃんに、うん、そう答えると、規格を確認した彼女は、お揃いで買おうよ!って言ってくれた。
私は暖色系の、ナオちゃんは寒色系のをそれぞれ選んで会計を済ますと、お店の前のホールにあるベンチでそれぞれ携帯にセットした。
そんな私達のところに集まってきたクラスメイトたちも、可愛いって盛り上がり、璃音が選んだんだよーってナオちゃんがみんなに言って、小宮山さんって結構持ってるもの可愛いよね!なんてみんなが褒めてくれた。
そんなこともあって、みんなとLINEの交換をして、こんな私でもクラスメイトたちとコミュニケーションをとれるようになった。
といっても、めまぐるしく流れていく会話についていけず、時々スタンプを送る程度だったけど、それでもみんな暖かく見守ってくれた。