第31章 【シンユウ】
「そこっ!さっきからうるさいわよ!おしゃべりするなら余所でしなさい!!」
そんなことをしているうちに、そう図書の先生に怒られて、彼女はやばって顔をして、はーい、すみませーん!そう言って、行こっ!小宮山さん!そう私の手を引いて走り出した。
「あ、あの……?」
そう戸惑いながら、彼女に引っ張られて中庭まで走りつくと、はー、疲れたー、そう言う水島さんと一緒にベンチに腰を下ろした。
荒い息を整えながら、ど、どうして……?そう恐る恐る話しかけた私に、彼女はきょとんとした顔をして、だって、おしゃべりなら余所でって言われたでしょ?そう無邪気に笑った。
「小宮山さん、私がおすすめの本、全部読んでるんだもんなー……」
そう残念そうな顔をする彼女に、申し訳ない気持ちでいると、でもさ、それって本の趣味があうってことだよね?そう言って水島さんは笑った。
「ナオでいいよ!私も璃音って呼ぶね!」
それが私の初めての友達であり、唯一の親友であった水島ナオとの出会いだった。
ナオちゃんは最初の印象通り、明るくて笑顔の耐えない子だった。
いつも私を気にかけてくれて、私に沢山話しかけてくれた。
私は相槌を打つくらいしか出来なかったけど、それでも彼女は側にいてくれた。
くるくる変わるその表情は、いつも私を楽しい気持ちにしてくれた。
ある日の放課後、図書室でまた本を読んでから教室に戻ってドアを開けようとすると、中から数人の話し声が聞こえた。
「どうしてナオは小宮山さんなんかに構うの?」
「ね、小宮山さんって全然喋らないし、なに考えているか分からないよね!」
「本当、本ばかり読んで自分とは違うって私達のこと見下してんじゃないの?」
そんなクラスメイトたちの言葉に、胸が締め付けられるように痛んだ。
そんなことないのに、ただ上手く話せなくて自分を表現できないだけなのに……
足がすくんで中にはいることも、そこから離れることも出来ず、ただその場に立ち尽くした。