第6章 【ヒョウヘン】
「体育倉庫ってさ、なーんか埃っぽいしジメッとしてるし、嫌だよな~?」
「無駄話してないで、さっさと確認してください」
次の日のお昼休み、さっそく菊丸くんと一緒に体育倉庫へと向かう。
体育倉庫の管理と言っても、実際に使うときに困らないように、ちゃんと用具がそろっているかとか、きちんと整理整頓されているかとか、窓や鍵や照明や……そんなことをチェックする。
それって体育祭実行委員の仕事?ってことまで入っているけれど、まあついでだしいいかってことで仕事に励む。
「跳び箱……マット……長縄……」
そう声にしながらチェック表にレ点を付ける。
そんな間、ヨッ、ホッっと言いながら跳び箱を跳んで渡る菊丸くんに、小学生か?と内心つっこみつつ、微笑ましく思って頬が緩み、慌てて顔を引き締める。
「菊丸くん、遊んでないで鍵の確認をしてください」
「ほいほーい♪」
そうおどけて返事をする彼に思わず見惚れてしまい、ニイッと笑う彼と目があって慌てて背を向けた。
ドキドキする心臓をぎゅっと押さえ、それより、仕事仕事!とまた用具のチェックを始める。
「平均台……リレーのバトン……菊丸くん、鍵はどうですか?」
そう彼に聞いたその瞬間、彼の返事の代わりに聞こえたのは、ガチャンと施錠された大きな音。
……え……?
何故かその音に胸騒ぎがして、恐る恐る後ろを振り返る。
な、に……?
振り返った私がみたものは、あの日の歪んだ口元でニヤリと笑う、
菊丸くんの笑顔だった___