第30章 【ソレゾレノヨル】
毎日の勉強を終えて、んーっと背伸びをすると、ペンを置いてパソコンを立ち上げる。
検索ワードを入力して、いくつかのサイトをまわりその内容を確認する。
心的外傷後ストレス障害……PTSDは、命の危険が脅かされるような強い精神的衝撃を受けることが原因、かぁ……
結局、ネットで調べてみても、私の求めている答えは載ってなくて、だってそれは英二くんの心の中にだけ正解はあって、しかも専門の知識がない私が簡単に触れてはいけない問題で……
って、私がもし専門家だとしても、英二くんはこの問題に触れることを許してくれないだろうけど……
結局、分かってはいたけれど、私に出来ることは何もなさそうで、本当に不二くんが言う通り、今まで通り側にいることで英二くんの心の闇を少しでも和らげることが出来るなんて信じられなくて……
ネットを閉じるとパソコンに残した英二くんのデータDVDを流してから立ち上がり、それから窓辺に移動して星空を眺める。
そもそも、英二くん、明日になったらまた笑いかけてくれるのかな……?
結局、英二くんは最後まで私に本当の笑顔を向けてくれなくて、最後にみた少し苦しそうに俯いた姿を思い出しギュッと胸をおさえる。
あんなに怒った英二くんは初めてで、まだ怖くて心臓がバクバクなりだして、不安で押しつぶされそうになる。
きっとあの後、不二くんが一緒にいてくれなかったら、そして私を落ち着かせてくれなかったら、今頃、恐怖と不安でおかしくなっていたかもしれないな……そんな風に思ってまた夜空を眺める。
切なさから涙が滲んで、また一滴、頬を伝って流れ落ちた。
♪~
突然、机の上の携帯がなって、まさか英二くん!?そう慌てて確認すると、ディスプレイにうつされた名前は別の人で、あ……って思って涙を拭い、何だろ?なんて不思議に思いながら、もしもし、不二くん?そう戸惑う声で電話に出た。