第30章 【ソレゾレノヨル】
親指で滲んだ血をさっと拭い、またチッと舌打ちすると静かに立ち上がる。
カーテンを開けて窓から広がる星空を眺め、締め付けられる胸をギュッとおさえる。
小宮山、今頃、また泣いてんのかな……?
とーちゃんによって伸ばされたレポート用紙に視線を落とし、そっとそれに触れる。
ふと目に留まった机の上に置いたままの携帯電話。
着信を知らせるランプが点滅している。
手にとって確認すると、すげー数のメールやLINEが来ていて、なんだー?って思って開いたその内容に、思わず目を見開いて二度、三度と確認する。
それは、不二と小宮山の写真が何枚か添付されていて、俯いた2人が手をつないで歩くところや、不二が小宮山を引き寄せて髪を優しく撫でているところ、そして見つめ合って笑う2人の笑顔なんかが映し出されていた。
2人、つきあってんの?、どういう事?そんな不二の友達のオレならなんか知ってるだろうと、同じ写真と似たような質問で埋め尽くされた携帯に苦笑いする。
完全に面白がってる野次馬のやつらと、すっかり頭に血が上ってる不二のファンと、もうすげー勢いで炎上していて、この調子だと既に学校中の奴らに拡散されてんだろうな……なんて思って首をすくめる。
「不二のやつ、気、抜きすぎじゃん……」
そうポツリと呟き、頭をかき乱しながら、どーすっかなー……なんて、返信の文句を考える。
だいたいこの写真、オレから見れば、必死に泣くのを堪える小宮山を不二が慰めてるところなのは一目瞭然だけど、何も知らない他の奴らから見たら、どっからどうみても、つき合っているようにしか見えないよなぁ……
涙で潤ませた瞳と赤みを帯びた鼻や頬の小宮山の笑顔が、写真で見ると不二に抱きしめられて感動しているようにしか見えなくて、普段、絶対見せない小宮山の笑顔が尚更2人の親密さを物語っているようで……
もうこれ、どうにも出来ねーじゃん?
面倒だし、何も知らねーで通しとこ、そうため息をついて携帯を操作すると、『さー?オレも聞いてないからわかんないや』そう同じ文面で片っ端から返信した。