第28章 【ヒキガネ】
「英二!ちょっとあんた、また倒れたって大丈夫なの!?……って、あれ?」
勢いよく階段を駆け上る音がして、勢いよく部屋のドアが開かれて、勢いよく飛び込んできたねーちゃんは、オレ達と目が合うと当然だけど驚いた様子で身体を固まらせる。
それから、ふ、不二くん!?そう少し頬を染めるねーちゃんに、ご無沙汰しています、お姉さん、そう不二が笑顔で挨拶をする。
ああ、面倒臭いことになりそうだな、そう思いながら、ノックくらいしてよね、なんて文句の一つくらい言っといて、それから、ねーちゃんも大袈裟ー、もう大丈夫だって、そう笑顔をむける。
そんなオレにホッとした顔をしたねーちゃんは、大五郎と不二の影になっていた小宮山に気づいたらしく、女の子!?なんで泣いてるの!?そう驚いて大声を上げる。
そんな小宮山をみるやいなや、英二!あんた、なに泣かせてんの!!そうオレの頭をグリグリするから、ねーちゃん、痛いっ!不二が見てるよっ!そう言って抵抗すると、ねーちゃんは慌ててその手を引っ込めた。
「あ、あの、違います、あんまり菊丸くんの話が可笑しくて、私、涙出てきちゃって」
そう慌てて涙を拭いて笑顔で誤魔化す小宮山は、小宮山璃音と申します、はじめまして、そう笑顔でねーちゃんに挨拶する。
そんな小宮山の態度にホッと胸をなで下ろすと、ひでー、ねーちゃん、ちゃんと謝ってよね、なんて頬を膨らませて、内心、本当にオレが泣かせたんだけどさ、なんてため息をついた。
そんなオレを無視するねーちゃんは、小宮山の顔をマジマジと見つめると、ハッとした顔をして、どっちの彼女……?そう不二とオレの顔を交互に見ながら、恐る恐る問いかける。
「どっちでもないよ、小宮山さんはオレのクラスの学級委員」
そう言うオレに、不二の彼女じゃないことにホッとした様子のねーちゃんは、ま、こんなきれいな子があんたの彼女のはずないわね、なんて言うから、それってどういう意味ー?そう頬を膨らませた。