第28章 【ヒキガネ】
「第一、学校でもちーっとも笑わないでさ、友達1人もいないなんて、小宮山、どっかおかしいんじゃないの?」
自分のその言葉がどれだけ小宮山を傷つけるのか、そんなこと自分でちゃんとわかってた。
世の中、言って良い言葉と悪い言葉があって、オレが今、小宮山に浴びせた言葉は、絶対、口にしてはいけない言葉の一つで、んなことわかってんのに、オレの中で広がっていく小宮山へのイライラが止まんなくて、その泣き顔を見てたら言わずにいられなかった。
小宮山の部屋の黒塗りの卒業アルバムを思い出して、それから昼休みに自分は性格悪いからってオレの腕の中で笑う小宮山の笑顔を思い出して、悪くないよって優しくキスした時のすげー幸せそうな小宮山を思い出して……
不二がオレの胸ぐらを掴んで睨みつけるのは当然のことなのに、相変わらず小宮山はこんなオレのことなんかかばって、ほんと、ばっかじゃないの?そう不二にされるがまま目を伏せる。
「不二くん、やめて下さい!英二くんを離して!」
オレの胸ぐらを掴む不二の手を必死に引き離そうとする小宮山に、不二はため息をついてその手をはなすと、英二、本当はちゃんとわかってるんだろう?そう呟く。
わかってるって、オレが全部悪いんだって、小宮山はなんも悪くない。
だけど、わかっていてどうにもできない自分に嘲笑う。
チラッと小宮山に視線をむけると、必死に涙をこらえて俯いていて、そんな顔させている自分にすげー腹が立った。
バッと手を伸ばして大五郎を掴むと、小宮山の顔面に押し付ける。
え?って大五郎の向こうからびっくりした顔を覗かせる小宮山に、抱いとけば?そう俯いたまま言うと、ちょっと戸惑った小宮山は、ギュッと大五郎を抱えてそのお腹に顔を埋める。
ありがとうございます、そう呟いて肩をふるわせる小宮山に、泣かせた相手に礼なんか言うなよ、そう思いながらため息をつく。
大五郎の背中に食い込む小宮山の指の絆創膏が、またオレの胸を痛ませた。