第28章 【ヒキガネ】
プリンを買いに行くかーちゃんを苦笑いで見送ると、携帯のメールやLINEのチェックをする。
あー、やっぱ不二と小宮山の話題でてんなー……なんて思って、いつの間にか小宮山、生徒会執行部に入ってんじゃん、そう思って苦笑いする。
学校のやつらからの、心配とも冷やかしともとれる内容に適当に返信してから、既読スルーしていたセフレたちからのお誘いの連絡を眺めて考える。
ど・の・こ・に・し・よ・う・か・にゃ?、そう小宮山の弁当のおかずを選んだときのように唱えながら、それぞれの子の顔だとか身体だとか、テクニックだとか、そんな事を思い出し、今の気分にあった子をひとり選んで返信文を打ち込む。
あー、やっぱこう言うの、気楽でいいよな、なんて思いながら携帯を操作していると、不二が来たことを知らせるかーちゃんの声が聞こえたから、上がってきてーとその場で返事をする。
返事をしてから、ん?って思って時間を確認すると、やっぱまだ部活中の時間で、オレのために授業の次は部活までサボリかよ?オレってば愛されてるー、なんて苦笑いした。
程なく部屋のドアをノックして入って来た不二に、先に女と約束済ませてしまうと告げると、突然、大声でオレの名を呼ぶから、何事かと思って顔を上げると不二が厳しい顔をしていて、その後ろに小さくなって震える小宮山の姿が見えた。
マジかよ?そう思ったら、思いっきり顔に出しちゃって、そんなオレと目があうと、小宮山はますます怯えた顔になり、ごめんなさい、そう小さく謝る。
その一言で目覚めたときには消えていたイライラが一気に復活してきて、何でこんなとこまで来てんだよ?そう思ったら本当に腹立って、ベッドから飛び出すと、帰れよっ!そうガクガク震える小宮山の背中をどんっと押して、部屋から追い出した。
「英二!僕が嫌がる彼女を無理に連れてきたんだっ!小宮山さんは悪くないっ!」
そう厳しい顔で言う不二に、チッと舌打ちをして、余計なことすんなよ、そうため息をつくと、ドアの向こうで小さくなって震える小宮山をもう一度睨みつけた。