第28章 【ヒキガネ】
「流石に大家族の英二の家に持って行くとなると、手土産もすごい量になるね」
公園を出た先にある洋菓子店は、不二くん曰く、英二くんのお気に入りということで、そこでお見舞い兼手土産を購入する。
いくら2人でお金を出しあうとはいえ、英二くんのご家族分+αとなるとすごい量で、個別のケーキではご家族の方も気を使うだろうと、ロールケーキ2種類とちょっとした焼き菓子などを数点、厳選して購入したものを不二くんと2人で手分けして持つ。
「どうしたの?小宮山さん?」
いざ英二くんの家のすぐ前に来るとやっぱり怖じ気づいてしまった私に、不二くんがそう声をかける。
「やっぱりダメですよ、不二くんがなにを言ったって、私が来たことを英二くんは許してくれないです」
そうため息をついて首を振り、コレ、不二くんから渡して下さい、そう言って私が持っていた分の手土産を、困った顔をして私を見ている不二くんに託そうとする。
はぁ……誘惑に負けてついて来ちゃったけれど、いざとなったらやっぱり足がすくんでしまう。
公園から程近い場所に英二くんのお家はあって、赤い屋根と出窓が特徴的なその家は大家族にふさわしい大きさなのに可愛くて、ここで英二くんは毎日暮らしているんだ、そう思うと憂鬱な気持ちとは裏腹に胸がキュッと高鳴った。
それにしても、うちと英二くんの家って、ちゃんとした道路を通ればグルッと距離があるけれど、公園を通れば2、30分くらいで行き来できる?
そう言えばネコ丸を拾ったときも、他の女の人との行為を目撃したのもあの公園だから、そう思うとわりと近いのも納得なんだけど、英二くんがうちに来たときにそれにいっさい触れなかった辺り、やっぱり私に知られたくないからだよね……
うん、見つかる前に帰ろう、そう思ってもう一度、帰ります、そう言ったところで、突然、玄関のドアがバタンと開き、驚いて不二くんと同時にそちらの方に顔をむけた。