第28章 【ヒキガネ】
「英二、パジャマに着替えてから寝なさい」
そうかーちゃんの起こす声に目が覚める。
大五郎を抱きしめながら泣くうちに、制服のままうとうとしちゃったんだな、そう思って身体を起こす。
ぬいぐるみ抱いて泣き寝入りかよ、そう自分に苦笑いしながら、ふわぁーっ大きな欠伸と、んーっと背伸びをしてから、大五郎をいつもの場所に座らせる。
起き上がってみるとだいぶ気分が良くなっていて、ほいほーい、そう笑顔でかーちゃんからパジャマを受け取ると、やっぱり大五郎は凄いわね、そう言ってかーちゃんもそっと微笑んだ。
「明日からはちゃんと自分でしなさいよ?」
そう言いながらかーちゃんがクローゼットを開けて、オレが脱いだ制服をしまおうとするから、毎日ちゃんとやってるし、別に今だって自分で出来るって、そう苦笑いをする。
でもオレがこうなちゃうと普段の肝っ玉振りとは打って変わって、超がつくほど過保護になるのはいつものことで、そんだけ心配かけてると思うとすげー申し訳なくて、いつもかーちゃんの気の済むようにしてもらってる。
こん時だけみたら、息子を溺愛するすげーイタイ母親と、かーちゃん大好きマザコン息子だよな……
そんな風に思って苦笑いしながら、先ほどかーちゃんから受け取ったパジャマに袖を通すと、制服を手にしたかーちゃんが、英二?そう訝しげに声をかける。
「ねえ、コレ、あんた自分でつけたの?」
へ?って思って視線をむけると、かーちゃんは小宮山がつけた学ランのボタンをマジマジと見つめていて、あんた、こんなに不器用だった?そう言って眉をひそめた。