第5章 【カウントダウン】
「かったるいよなー……」
放課後の会議室で、菊丸くんは組んだ両手を後頭部に当てて、椅子を後ろに傾けながらブラブラさせる。
会議室ではクラスごとに決められた席に座るので、当然、私と菊丸くんは並んで座っている。
「危ないですよ?、それに立候補したのは菊丸くんですが?」
視線は手元の本に向けたままそう答える。
本当、菊丸くんって気分屋なんだから……
「小宮山さんってさー、なんでそんなにツンツンしてんのさ?」
「……地です」
「えっとえっと……んじゃさ!いーっつも何読んでんの?」
「本です」
「……小宮山さん、オレと会話する気ある?」
「今してるじゃないですか……?」
こんなに頑張って会話しているのに、いったい何を言っているの?
そう不思議に思って菊丸くんを見ると、彼は苦笑いをして私から視線をそらした。
「なーんか、小宮山さんって手塚に雰囲気似てるよにゃー?」
「さぁ?私は高等部からなので手塚選手のことはわかりません」
「手塚『選手』かー、オレ、ちょい苦手で殆ど話さなかったんだよね~」
……それって間接的に私も苦手ってことね?
そう心の中でため息をつく。
「はい、それでは第一回体育祭実行委員を始めます」
そう司会進行役の生徒が前で話をする。
なんだかんだと会議は進み、今後の活動内容と担当が決まる。
我がクラスは私が学級委員と掛け持ちということで、一番楽な体育倉庫の管理、なんていう、本当に必要なのそれ?という係りになった。
まぁ、楽ならそれでいいけれど……
菊丸くんは、ラッキー、小宮山さんのおかげじゃん♪そう言って笑っていた。
その笑顔に心臓がドキンとなって、私は慌てて俯いた。