第27章 【シンパイ】
「不二先輩~!今日も部活、頑張りましょ……って、ああっ!」
不二くんの後に続き昇降口までくると、そうこの間の部室であった後輩の子が不二くんに声をかけ、それからその子は私の存在に気が付くとギクッと青ざめた顔をする。
ああ、この子、DVDで英二くんと一度ペアを組んでた桃城くんっていう子だって思って、でもなんで怯えるの?そう不思議に思って首を傾げると、桃城くんは、不二先輩、俺、何も見てないっす!そう慌てて走り去ろうとする。
そんな桃城くんを、あ、桃っ!、そう不二くんが呼び止めるから、もう一度ギクッと肩をふるわせた彼は、恐る恐るこちらを振り返る。
「今日は部活を休むよ、これからちょっと彼女と行くところがあってね」
乾には伝えてあるけど、一応、桃にも話しておくよ、そう言ってにこやかに微笑む不二くんに、え?ってびっくりする私と桃城くんだけど、桃城くんは何故か急に目を輝かせ、わかりました!俺、みんなにうまく言っときますよ!そう笑顔で走りだす。
「ちょっと、桃、うまく言うっていったい何を……?」
「大丈夫っす!俺、口かたいんで安心して下さい!」
青春だね~、そう満足そうな顔をしてあっという間に見えなくなった桃城くんに、つい呆気にとられてぼーっとしていると、本当に桃は仕方がないな、そう言って不二くんは苦笑いをした。
「あ、乾、うん、コレから行ってみるよ、そう、彼女も一緒に」
ちょっとごめんね、そう私に断って不二くんは電話をかけだして、乾くん?行ってみる?なんて不思議に思いながらその電話が終わるのを待つ。
「それから、さっき桃のやつが勘違いしてコートに向かったから、余計なこと言わないように見張っといてくれる?」
いざという時は例の試作品で黙らせておいてよ?そうフフッと目を開けて不適な笑みを浮かべる不二くんに、ああ、コレが英二くんの言う不二くんの怖い笑顔なんだな、そう思って苦笑いをした。