第26章 【イタイノトンデイケ】
「英二!!」
あー……このままだと意識とぶかも、そう思いはじめて諦め掛けたとき、ふとオレを呼ぶ声が聞こえてそっと目を開けると、向こうから必死な顔で走ってくる不二が見えた。
さすが、不二じゃん、ピンチに現れる王子様……って、だからオレ、そんな趣味ないっての。
「今、タカさん来るから、乾は英二の家に連絡してくれている」
そう言いながらオレの身体を起こす不二に、みんな大袈裟だって、授業サボって何やってんの?そう苦笑いする。
「何で、分かったのさ……?」
「小宮山さんが、教室に飛び込んできたんだ、助けてって」
あいつも、目立つのキライな癖に何やってんの、そう言って鼻で笑うと、本当、英二のこととなると彼女は凄い行動力だね、そう言って不二は微笑んだ。
だいたい、助けてってなんだよ?オレがこんななの、あいつ知らないくせになんで助けが必要なの分かったのさ。
ほんと、あいつはそうやってどんどんオレの心の中に踏み込んできて、そんでなんも知らないくせにピンポイントで痛いところを突いてくる。
小宮山の『痛いの痛いの飛んでいけ』を思い出すとまた胸が苦しくなって、そう言うところがすんげーいらつくんだって、そう言ってもう一度嘲笑った。
「不二……悪いんだけどさ……ソレ、とって、くんない……?」
不二が袋の中からタオルを取り出して渡してくれたから、急いでそれに顔を埋めると、ふわりと小宮山の香りがした。
小宮山の香りと共にゆっくりと息を吸う。
身体中に酸素が回っていくのを感じ、ふーっと安堵のため息を落とす。
ギュッともう一度ボタンを握りしめると、少し心が軽くなった気がした。