第26章 【イタイノトンデイケ】
「大丈夫です、絆創膏が必要なほどの怪我じゃありませんから!」
差し出された手に、え?って慌てて左手を後ろに隠すと、英二くんは、いーからいーから、そう言って強引に私の手を取った。
英二くんに触れられた手が恥ずかしくて、ふと視線を上げると歪んだ胸のボタンが恥ずかしくて、もっと顔を上げると目の前にある彼の顔が恥ずかしくて、もうとにかく何もかも恥ずかしくて、慌ててもう一度繋がれた手に視線を落とす。
「絆創膏ってさ、おまじないみたいなもんなんだって」
ちょっと声のトーンを落とした英二くんが、私の指に絆創膏を巻きつけながらそう言うから、おまじないですか……?そう不思議に思って首を傾げる。
すると英二くんは、痛いの痛いの飛んでいけーってね?そう言って私の指をそっと撫でて、それから手をパッと開いて遠くに飛ばす真似をするから、そんな彼の仕草に思わず頬を緩める。
「確かに貼った途端に痛みが引きましたね、子供の頃は」
そう私が納得して言うと、だろ?って得意気な顔をした英二くんは、次の瞬間、ん?って眉間にしわを寄せて、それってオレがガキだってことー?そう言って頬を膨らませる。
そして2人でクスクス笑うと、ほんと、コレ、効くんだって、そう言って英二くんは少し寂しそうな顔で笑った。
その英二くんの寂しげな笑顔が気になって、ふと彼の頬の絆創膏に視線を向ける。
英二くんの絆創膏っていつも同じ所に貼っているけれど、流石にずっと怪我してるってことはないよね……?
もしかして彼の言う「おまじない」で貼っているのかな……?
先ほどの英二くんの寂しげな笑顔と、時折見せる空を見上げる寂しげな目が重なって、ギュッと私の胸を締め付ける。
もしかして顔に傷跡があってそれを隠しているっていう可能性もあるけれど、どっちにしても理由は聞けないよね……そう思って俯いて、彼が巻いてくれた左手の絆創膏に視線を落とした。