第25章 【ランチタイム】
「あの……コレなんですけど……」
お弁当を食べ終わると、空のお弁当と引き換えに、鞄から紙袋を取り出した小宮山が、コレ、うちに来たときに返しそびれちゃって……そう言ってその中身を覗かせる。
あー、そういや返したいものあるって言ってたね、何か貸してたっけ?……そう不思議に思いながら確認すると、それは確かに見覚えのあるオレのタオルで……
「これ、ネコ丸を拭いてくれたタオルです、あの雨の日に……すぐに洗ったからちゃんと汚れ、落ちましたから……」
そう懐かしそうな顔をしてタオルを見る小宮山に、そういやあん時、オレ、これでネコ丸を拭いてやって、そんでそのままあげるつもりで置いてきたんだっけ、なんてぼんやりと思い出す。
「持ってたんなら、朝、使えばよかったのに……」
そうタオルを受け取りながら、思わず口にしてしまい、あって思って慌てて口をおさえながら、そーっと小宮山の様子を伺う。
すると少し驚いた顔をした小宮山は、朝の水道でのことですね?大丈夫ですよ、気にしないでください、そう言ってちょっと困ったように笑った。
そんな小宮山の作り笑顔を見てたら、あー、オレ、こんな所でも小宮山を傷つけてんだなーって思って胸が痛み出す。
もともと小宮山を影でバカにして笑う奴らもいたけれど、でもこんな風にハッキリなんかされたり、聞こえるように色々言われるようになったのは、全部オレが元凶になってんだよな……
オレと同じ委員になってすぐの頃、小宮山を感じ悪いって一部の女子が大声で言い出したあん時がたぶん最初で、素顔を晒させてからは男子からいろんな意味で人気が上がっていって、そんで女子からの妬みも高まっていった。
やっぱオレが悪いんじゃん、そう思うとごめんなって言いそうになって、でもそれを言ったら小宮山の気持ちを傷つける気がして、グッとその言葉を飲み込むと、その身体を抱き寄せた。