第25章 【ランチタイム】
カシャ
オレの話がよほど面白かったらしく、珍しく大笑いしている小宮山を見てたら、なんとなくそんな気分になって携帯のシャッターを押した。
そんなオレに小宮山は驚いた顔をして、それから恥ずかしそうに俯く。
最初の時の動画を保存している鍵付きフォルダに、小宮山の笑顔を移動して保存すると、弁当から野菜のベーコン巻きを摘まんで口に放る。
小宮山の弁当は女の子らしくオレや他の男子達とは違う小振りなものだけど、おかずの量は豊富で色とりどりで、それからどれも自然な優しい味がする。
「小宮山のかーちゃん、料理上手だね」
「そうですね、上手ですよ」
小宮山らしく謙遜もしないでそれを肯定すると、優しいですし尊敬してます、そう言いながら紙パックのお茶を手に取って、ハンカチで周りの汗を拭き取ってからストローを差して、どうぞ?とオレに差し出す。
あんがとねってそれを口に含んで、それからほいっとそれを小宮山に返すと、え、でも……そう恥ずかしそうに目を泳がせる。
「間接キス?んなこと今更、気にしなくていーじゃん?」
小宮山らしいけどさ、そう思いながらニヤリと笑うと、小宮山はますます真っ赤になって、オレから受け取ったお茶をひとくち口に含んだ。
「美人で優しくて料理上手って最強のかーちゃんだよなー」
小宮山が尊敬するくらいだから、きっと本当に良い母親なんだろうな、そう前に部屋で見た家族写真を思い出しながら言うと、はい、私の目標です、そう小宮山は嬉しそうに笑う。
「英二くんのお母さんはどんな方ですか?」
そう自然な流れでオレに質問する小宮山に、オレの母親?ってちょっと考えて、ある意味、最強?そう目を伏せて答えると、えっと……?そう小宮山は意味が分からない様子で戸惑う。
かーちゃん、優しいよん、学食代くれなかったけどさ、そう顔を上げて苦笑いすると、小宮山のお茶をもうひとくち口に含んだ。