第25章 【ランチタイム】
「そういえば、お弁当、不二くん達に分けてもらえば良かったんじゃないんですか?」
英二くんはよく不二くんやテニス部の人達とお弁当を囲んでいるから、そう不思議に思って問いかけると、小宮山はオレに弁当わけんの嫌だってのー?なんて英二くんが怪訝な顔をして私の顔を覗き込む。
そ、そんな訳じゃないです!って慌ててそれを否定すると、ウソウソ、そう英二くんはニイッと笑い、もちろん不二には最初に頼んだよーと頬を膨らませる。
笑顔でくれるって言ってくれたんだけどさー、そう何故か怯えた様子で話す英二くんを不思議に思って首を傾げると、小宮山は不二のことを何もわかってない!そう彼は青ざめた顔で私を指差す。
「何も言わずに笑っている不二ほど恐ろしいものはない!」
今日だって弁当全部くれるって言うから、ダッシュで逃げてきた、そう言う英二くんが可笑しくて、思わずクスクス笑ってしまう。
笑い事じゃないっての!そう言って頬を膨らませる英二くんがますます可愛くて、ごめんなさい、そう謝りながらも笑い続けた。
カシャ
夢中で笑っていると突然響いたシャッター音に驚いて目を開けると、なぜか英二くんは私に携帯をむけていて、コレ?コレクション♪そう言ってウインクをする。
コレクションって?そう言って、思わず最初の動画を思い出し、他にもとられていたのか不安になってしまうと、大丈夫だって、最初んときとコレだけだから、そう英二くんが私の気持ちを察して言うから少しホッとする。
それにしても、今のって私が笑ってるところだよね……?
どうして突然英二くんがそんな気になったかわからないけれど、例えそれが得意の彼の気まぐれだとしても、それでも私の笑顔を携帯に保存する気になってくれたことが嬉しくて熱くなる顔をそっと俯いて隠す。
消してって言わないの?そう彼がチラッと私を見て言うから、英二くんだけの秘密なら構いませんよ?そう制服のリボンの端をそっと指で摘まんで巻き付けた。