第25章 【ランチタイム】
先生に頼まれて職員室にプリントを届けると、いつものように鞄を持って体育館裏の小さなスペースへとむかい、いつものように木陰の茂みに座ってお弁当を広げる。
「小宮山ー、弁当わけてー!」
そういつもと違って突然現れた英二くんに驚いて、思わず口をパクパクさせてしまうと、なんだよ、その顔ー、そう英二くんは楽しそうに笑う。
「お弁当、忘れたんですか?」
「寝坊したせいで作る時間なかったの!」
「もしかして自分で作ってるんですか?」
「まーねー」
そう言いながら英二くんは、可愛い包み紙に包まれた小さなおにぎりを頬張りながら、私のお弁当を覗き込む。
ど・れ・に・し・よ・う・か・にゃ・?と指差しながら選んだ玉子焼を手掴みすると、パクッと口に放り込み、あ、小宮山ん家の玉子焼、甘めー♪そう言って笑った。
そんな彼の仕草にキュッて胸が高鳴って、だし巻きの日もありますよ?なんて答えながら、英二くんが食べている、その明らかに女の子からもらったであろうおにぎりに視線をむける。
英二くんは女の子から人気があるから、これくらいいつものことなのに、なんで今日はこんなに不安になるんだろう……そう息苦しさを感じてコッソリため息を落とす。
そんな私に、どったの?って指をペロッと舐めながら英二くんが聞いてくるから、何でもありませんよ、そう慌てて笑顔を作る。
気にしたって仕方がないし、誰からもらったとしても、私には関係ないことだもの……
そんなことより今は突然訪れた、この初めての一緒のランチを素直に楽しもう!なんて思って、鞄の中のポーチからウエットティッシュを取り出すと、一枚目をちょっと摘まんで、英二くんの前に置き、使って下さいね?そう言って笑う。
さっすが小宮山、気が利くー♪って英二くんがそのウエットティッシュを引っ張りながらウインクするから、恥ずかしくて慌てて俯いた。