第25章 【ランチタイム】
「やったね!芽衣子!」
教室を後にした途端、中からそんな女の子達の盛り上がる声が聞こえてくると同時に、英二先輩!と桃が血相を変えて飛び出してくる。
「ん?どったの、桃ちん」
「あのっ、鳴海はその……駄目ッスよ!アイツは、先輩のセフ……とは違うタイプで……」
そう耳まで真っ赤にして訴える桃に、桃ってば可愛いー、そう思ってニヤリと笑うと、だいじょうび、オレ、学校の子には手ぇ出さない主義だから、そう言って肩に手を回す。
「だから安心して頑張ってよねん、芽衣子ちゃん、可愛いーもんねー?」
「な、なに言ってんすか!俺は別に鳴海の事なんてなんとも……」
「いーから、いーから♪」
ちゃーんとわかってるからー、そう言って肩をポンポンと叩くと、じゃーねーと手をヒラヒラさせて歩き出す。
それから、後頭部で腕を組んで数歩歩いたところで、あっ!って振り返ると、はい?って安心した顔で返事をした桃に、でもさ?そう声をかける。
「万が一、芽衣子ちゃんがこんなオレでもいい、なーんて言っちゃったら、そん時はごめんねー?」
そう言ってニヤリと笑うと、へって顔をした桃の顔から一気に血の気が引いていく。
ちょっと待って下さいよ、英二先輩ー!そう慌てる桃に背をむけて歩き出すと、んべーっと舌を出してまた笑う。
本当、桃ってばからかうと面白いよなー、確かに芽衣子ちゃんはタイプだけどさ、だからってヤったりしないって、学校で本性バレたら困るかんね。
それにしてもお昼、流石にこれじゃたんないよなー、ったく不二も桃も友達がいがないやつー、そう頬を膨らませると、それからあっ!と顔を上げる。
こんな時の小宮山じゃん?まだ弁当残ってっかなー?確か職員室にプリント届けるように言われてたからまだ大丈夫だよな?
やっぱ持つべきものは腹黒い親友より、食い意地張ってる後輩より、オレに夢中な小宮山だよなー、なんて思いながら、小宮山の弁当ポイントである体育館裏へと駆け出した。