第25章 【ランチタイム】
「き、菊丸先輩、私のお弁当で良かったら食べて下さいっ!」
そう真っ赤な顔をした彼女の行動により静まり返った教室で、桃を羽交い締めしていた腕を放すと彼女の前に移動する。
それから、あー、あん時の!そう彼女を指さしながら言うと、は、はいっ!そう彼女はますます顔を真っ赤にして俯いた。
あん時振った彼女の顔は好みのタイプだったからよく覚えてんだけど、それでも名前の方が思い出せなくて、そんな彼女の顔を眺めながら必死に呼び出しの手紙を思い出す。
だけど呼び出しなんて珍しくもないからいちいち名前なんて覚えてなくて、やっぱ一生懸命考えてみても全然思い出せそうになくて、名前、なんだっけ?って聞いたらやっぱ失礼だよなー?なんて考える。
それより、ただでさえ突然教室に現れたオレと桃のやりとりで注目を浴びてる中、さらに真っ赤な顔でオレに弁当差し出したその彼女に、あんがい大胆だねって内心苦笑いをする。
それにしても、どう見てもまだオレに気があるこの子から弁当貰うってダメだよな?
だからってこの状況で断ったら可哀想だしなー……
第一、この弁当、オレが食べちゃったら、彼女の弁当なくなっちゃうじゃん?
ここは一緒に食べる?って聞いとくところ?
いやいや、それこそその気もないのに可哀想じゃん?
そう必死にどうしようか悩んでいると、そんなオレと、真っ赤な顔で俯く彼女を見比べながら、英二先輩!英二先輩!そう眉をひそめた桃が声をかけてくる。
「英二先輩、鳴海と知り合いなんすか?」
あー、そうだ、鳴海さんだって思いながら、んー、ちょっとねー、そう鳴海さんに目配せすると、彼女は真っ赤な顔で、はいって頷いた。
えっと、鳴海__……そう指を立てながら下の名前を考えると、芽衣子です、鳴海芽衣子、そう彼女が恥ずかしそうに名前を名乗る。
そうそう、芽衣子ちゃん、名前も可愛いねーなんて思っていると、英二先輩ー?そう桃が訝しげにオレを睨んだ。