第24章 【ネコトイヌ】
「ごめーん、小宮山さん、また寝坊しちった~」
寝坊のせいで朝練には練習が終わる頃に着いて、オレの分の仕事もやる羽目になった小宮山に舌を出して謝ると、別に構いません、そうみんなの手前ぶっきらぼうに小宮山は答える。
それから英二、おせーよ!って手招きするクラスメイト達に、昨日の夜、勉強頑張ったからさーって言ってみんなで笑う。
結局、殆ど練習する時間はなくて、倉庫に用具を全部片づけると、遅刻しちゃったしオレが職員室に持ってくよん、そう言って小宮山と鍵当番を変わる。
それから校舎に向かう途中で、小宮山の身体のことで盛り上がる男子達の声が聞こえたから、チラッと視線をむけるとすぐそばに小宮山もいて、お前ら本人の前では控えろよなー、なんて苦笑いをする。
すると次の瞬間、小宮山の隣にいた女子達がヒソヒソと何か耳打ちして笑うから、嫌な予感がして見ていると、その中のひとりが勢いよく出した水道に手を添えて、小宮山めがけて水をとばした。
マジでー?あいつら、段々エスカレートしてきてんじゃん、そう眉間にしわを寄せてため息をつく。
小宮山はそんなアイツ等に文句も言わずに、ただハンカチで髪を拭きながらその場を離れるから、そう言うところが小宮山らしいんだけど、そんなんだからやられ放題なんじゃん!って思わずイラッとする。
言いたいことがあるならはっきり言えばいーじゃん、そう言うところは大石と同じだよな、なんて思って、でもちょっと気が弱くて遠慮がちな大石と違って、小宮山の場合は相手にしたくないって感じだけどって思った。
昇降口で靴をはきかえると、小宮山にクラスメイトの市川がタオルを差し出しているのが見えたから、お?って思って見てみると、私に関わらないでください、そう小宮山が冷たく言い放ち市川に背をむける。
「相変わらずきっついねー、たぶん今のは言葉足らずなんだろうけどさ」
そう複雑な顔をしている市川に苦笑いして話しかけると、うん、私もそう思う、そう言って市川はすっきりした顔で笑った。