第24章 【ネコトイヌ】
「小宮山って、実はおっぱいでけーよな!」
「それに足だってキレーだし、たまんねー!」
登校前のグラウンド、月曜日から行われている体育祭の練習も水曜日の今日が最終日。
最後の練習も無事に終わり、やれやれとホッとして水道で手を洗う私の耳に、男子達のそんな声が聞こえくる。
ジャージの半袖は制服より身体のラインが分かりやすいし、ハーフパンツは私の規定通りのスカートよりも足の露出が多くなるから好きじゃない。
だからってそんなこと聞こえるように言う?気持ち悪い……そう思いながら内心イライラする。
って、英二くんはもっと酷いことしたのにね、彼なら良くて他の男子なら嫌だ、なんて私ってゲンキンだな……そう苦笑いする。
そうそう、その肝心の英二くんなんだけど、初日はみんなより早くきて云々って言っていたくせに、昨日は遅刻、今日に至っては終わる頃に現れるという重役出勤ぶり。
私一人張り切って凄く早く来てバカみたいだし、それでいい加減に考えてることわかれっていわれても……そう内心苦笑いをする。
英二くんに振り回されるのなんて日常茶飯事だし別に良いけれど、そう思って蛇口をひねって水をとめたところで、突然顔に冷たい感覚が走る。
なに……!?って驚いて濡れたところを触り、これって水……?そう怪訝な顔をして飛んできた方向を見ると、隣の水道を使っていた女の子達がアハハハハと声を出して笑い出す。
「あ、かかっちゃったー?ごめんねー?」
わざとじゃないよー、そう言って意地悪く笑う彼女たちに、これの何処がわざとじゃないのよ、そう心の中で毒を吐くと、いえ、大丈夫です、そうため息をついてハンカチで濡れたところを拭きながら立ち去る。
更衣室に向かう私の耳に、女子達の甲高い笑い声と、女子って怖えーと言う男子達の声が聞こえてくる。
ま、いいけどね、水なら跡形もなく乾いてくれるから、そうビッショリした髪をそっと撫でてもう一度ため息をついた。