第24章 【ネコトイヌ】
「ねーちゃん、ゴメン……」
部屋を出て行こうとするねーちゃんに、そう大五郎を抱きしめながら小さく謝ると、別にいいのよ、おねーちゃんが悪かったんだから、そうねーちゃんはもう一度ため息をついて、今度は静かにドアを閉めた。
ねーちゃんが出て行くと途端に静まり返った部屋で、ギュッと大五郎を抱きしめる。
すーっと大きく息を吸い、大五郎をいつもの位置に座らせると、んじゃ、行ってくんね、そう半笑いで部屋を出た。
洗面所で歯磨きをして髪をセットし、パンッと両手で頬を叩くとニイッと笑って情けない顔をリセットする。
それからキッチンへ行って、ねーちゃんが作った目玉焼きとトーストを急いで頬張る。
「ねーちゃん、ついでにオレの弁当……なんか作ってくんないよね……?」
そう自分の弁当を詰めているねーちゃんにダメ元で聞いてみると、何言ってるの?作るはずないでしょ?そう言ってねーちゃんは爽やかに笑う。
「かーちゃん、学食代……」
今度は前の席で朝食をとっているかーちゃんにそう頼みかけたけど、チラッとオレをみたその迫力に首をすくめて何も言えなくなる。
ちぇーっ、そう頬を膨らますと、急いで残りのトーストを牛乳で流し込み、もう一度洗面所で歯磨きをしてから、んじゃ、行ってくんねーっとキッチンに顔を出す。
「あ、英二、ちょっと待ちなさい!」
そうオレに声をかけるかーちゃんに、何?やっぱり学食代くれんの?そう目を輝かせて言うと、あんた胸のボタン、緩んでるわよ、ちゃんと付けなおしときなさいね、そう言ってかーちゃんはお茶をすする。
ちぇー、期待させといてそんなことかよー、そう肩を落としながら学校へと向かった。