第23章 【エイジトテニス】
「小宮山のことだってさ、自己満足のお節介なんだって……」
そう視線だけ上げて不二の顔を見ながら、あんなDVD貸してやって、ますますオレのこと好きになったらどーすんの?そう言って鼻で笑うと、なるだろうね、そう不二もフフッと笑う。
そんな笑顔であっさり肯定されてもさ、不二だってよっぽどゲスじゃん?そう苦笑いをして首を横に振ると、いっそ、あの頃のオレを見て今のオレに幻滅してくれりゃ気が楽なのにさ、そう呟やきながら足元に視線を向けた。
「だいたい、小宮山にオレがテニスやめた理由、聞きたいって言われたらどうするつもりだったんだよ?」
そうオレ以外からは聞きたくないと言い切った小宮山の強い口調を思い出す。
誰にでも人には知られたくないことがあるって、あの言葉を口にした小宮山は、いったい何を思って言ったんだろうな……
小宮山には悪いけど、オレ、絶対話さないよん?そう呟きながら自分に嘲笑った。
「小宮山さんにも見抜かれていたけれど、彼女が聞きたがるはずないと思ったからね」
それにもし聞きたいっていったら、英二が止めに入っただろ?そう言う不二に、ま、そうだけどさ、そう答えながら立ち上がる。
だって言えるはずないじゃん?心がポンコツで身体が動きませんって?
小宮山、知ったら多分、オレのこと可哀想って泣くに決まってるし、そう言うの本当、勘弁なんだって。
「んじゃ、オレもう帰んね、次期部長さんが、いつまでもサボってたらまずいんじゃないのー?」
部活中に部室に部外者を連れ込むとは何事だ!不二、グラウンド30週!そう手塚の真似をして言うと、苦笑いしている不二に手をひらひらさせて部室を後にした。
教室へ戻る途中、グラウンドの脇の水道で魂の抜け殻になっている桃を見つけて、あーっと苦笑しながら教室へと向かった。