第23章 【エイジトテニス】
「不二せんぱーい!俺と練習試合、お願いしまっす!……て、あれ?」
勢いよく開かれたドアから、勢いよく飛び込んできた桃は、小宮山とその頬に触れる不二を見て笑顔をひきつらせた。
やっぱり練習の邪魔しちゃいましたね、そう言って小宮山が固まっている桃に会釈をすると、それでは失礼します、そう頭を下げて部室を後にする。
ったく、桃のやろータイミング悪すぎ!
せーっかく、2人、いい感じだったのにさ~。
不二が小宮山と2人でいても、何もするはずないかって思ってたけど、オレも覗いていなくて本当に2人きりだったら、案外どうなるか分かんないかもねー?
小宮山が出て行った後の部室で、にこやかに桃を見てほほえむ不二と、やっべーっと笑顔をひきつらせる桃を見ながら、そんな風に思って苦笑いをする。
「……不二先輩、俺、もしかして、邪魔しちゃいましたか?」
「そんなことないよ?ちょうど用事も済んだところだしね」
その言葉に少しほっとした桃が、それじゃ、コートで待ってます!、そう言って部室を出て行こうとするから、そんな桃を不二が、あ、桃!と呼び止める。
「凄い汗だね、ちゃんと水分補給してる?」
そう言って不二は自分のロッカーからゴソゴソとボトルを取り出すと、爽やかな笑顔でそれを桃に差し出した。
「……不二先輩、コレ、なんっすか?」
「あげるよ、不二特製、激辛ドリンク。結構いけるよ?オススメ 」
そう爽やかな笑顔からどす黒いオーラを放ちクスクス笑う不二に、いぃぃぃーーー!と桃が不満の声を上げる。
上げたところで不二のオーラに勝てるはずもなく、結局、恐る恐るその恐ろしい激辛ドリンクを口に含んだ桃は、そりゃねーな、そりゃねーよ!と叫びながら部室を飛び出していった。
乾汁ならぬ、不二汁……なんて恐ろしい飲み物にゃ……桃、ご愁傷様、そう思ってオレは首をすくめながら苦笑いをした。