第23章 【エイジトテニス】
「小宮山さん、英二がテニスをやめた理由、知りたい?」
不二くんのその思いがけない言葉に思わず目を見開いて彼の顔を見上げる。
英二くんがテニスをやめた理由……もちろん出来ることなら知りたいと思う。
それだけじゃなくて、どうしてあの寂しい目をするのかとか、どうして一生誰も好きにならないなんて言うのかとか、彼をそれほど苦しめるものはなんなのかとか……あげればきりがないほど、知りたいことは沢山溢れ出す。
きっと私のその疑問符の答えを、不二くんはすべて知っている。
本当はすぐにでも教えてほしい、でもそれを不二くんから教えて貰うのは間違っている。
聞くなら本人の口から直接聞かなきゃ意味がないもの……そう思って私はゆっくりと首を横に振った。
「どうして?知りたくない?」
「もちろん知りたいですよ……?」
でも、英二くんはきっと誰にも知られたくないだろうから……そう髪をそっと耳にかけながら写真の英二くんに視線を戻す。
「英二くんのことは何でも知りたいです……でも誰にでも、人に知られたくない事って多かれ少なかれあるから……」
だから、もし、英二くんが話してくれるなら嬉しいけれど、他の人からは絶対聞きたくありません、そう自分に言い聞かせるようにはっきりと断る。
そう、誰だって知られたくないことってあるもの、それを自分の知らないところで人に話されたらそんな嫌なことってない。
「不二くん、私が断るのわかってて聞いてきたんですよね?」
私のその問いかけに、驚いたように目を見開いた不二くんがどうして?って聞くから、だって大切な友人が隠しておきたいことを、不二くんが勝手に話すはずないじゃないですか、そう答える。
聞きたいって言わないのを分かっているからそんなこと言い出せるんですよ、そう言って不二くんの目をみると、参ったな、そう不二くんはばつが悪そうに笑った。