第23章 【エイジトテニス】
「適当に座ってて、今、探すから」
失礼しますと不二くんの後に続いて男子テニス部の部室に入る。
適当にって言われても……そう初めて入った部室に戸惑いながら窓辺のベンチに腰を下ろす。
「でも……英二くん、嫌がりませんか……?」
私が勝手にテニスのDVDみたら怒られないかな……?そう不安になって不二くんに問いかけると、大丈夫だよ、嫌ならとっくに何らかのアクション起こしているはずだから、そう言って意味深に笑うから、そんな彼の言葉の意味が分からず首を傾げた。
ふと目に留まったコルクボードにピンで留められた写真の数々。
そっと立ち上がり中心に貼られた大きな写真を覗いてみる。
全国制覇!!って中3の時かな……?
英二くん……そっとその写真の彼に触れてみる。
写真の最前列に並び、前髪付きの特徴的な坊主頭の人の肩を抱いてブイサインをする英二くんは、今よりちょっと幼い顔つきで、でも凄く嬉しそうに笑っていて、こんな幸せそうに笑う彼の笑顔、見たことないなって心臓がキュッとなった。
「英二、良い顔してるでしょ?」
ハッと慌てて写真に触れている手を離す。
ごめんなさい、勝手に……そう不二くんの方を振り返ると、構わないよ、そう笑った彼も私の隣に並んで一緒にその写真を眺める。
「この頃の英二は何をしていても楽しそうでね、今の見せかけの笑顔じゃない、本当にクラスでも部活でもいつもみんなの中心にいて、まさにムードメーカーと言う言葉がピッタリだったよ……」
そう言って写真を眺める不二くんの目は、どこか寂しそうで、それでいて凄く哀しそうで、本当に英二くんを大切に想っているんだなって思って胸が切なくなる。
英二くんがこの頃の笑顔をとり戻せたらいいのに……そう思いながら、もう一度写真の彼に視線を戻した。