第23章 【エイジトテニス】
すーっと大きく息を吸って心を落ち着かせる。
気合い入れてるときはどんなに思い出したって、これ以上苦しくなんねーのにな、そう不思議に思いながらテニスコートを眺める。
ふと視界に入った小宮山の姿。
トイレから戻らないオレをさがしに来たのか?
いや、小宮山のことだからそんな事したらオレが嫌がるのなんてわかるはず。
んじゃ、偶然か……オレと同じようにボールの音に誘われてきたってところかな。
つーか、委員会終わんの、早すぎじゃん?そう思って携帯の時計を確認すると、案の定、まだ予定よりだいぶ早い時間を表示していた。
きっと小宮山、オレのことが気になってさっさと終わらせようと、まーたツンツン命令してみんなの反感かったんだろーなー、なんて思って苦笑いする。
本当は結構笑うし、からかうと面白いから見てて飽きないんだけどね、よくもあそこまで態度変えれるよなーってそれはお互い様か。
悪いけど、今は小宮山と顔、合わせたくねーや……
こちらにむかってくる小宮山の姿を確認して、とにかくやり過ごそうと慌てて木の枝によっとジャンプしてよじ登る。
……つうか、なんでこの下で落ち着くんだよ……?
寄りによってこの木の下で立ち止まってしまった小宮山を、上から恨めしく睨みつける。
まあ、こんな遠くから部活見学しようと思ったら当然のポイントか。
なんかオレ、前の屋上の時といい今回といい、しょっちゅう小宮山に隠れて上からこっそり眺めてんじゃん。
だから覗きが趣味なのは小宮山だけで十分なんだって、そう思って苦笑いをする。
それにしても本当にあん時みたいだな、そう思ってちょっと嫌な予感が胸を襲う。
嫌ってわけじゃないんだけどさ、こう言う状況の時ってはかったように現れるやつがいんだよねー……って思っていると、案の定、木の枝の隙間からのぞいたレギュラージャージ。
「やあ、小宮山さん、こんな所で見学?」
……やっぱりね、小宮山の隣に並んで立った淡い色の髪にオレは苦笑いをした。