第23章 【エイジトテニス】
「はい、皆さんが一生懸命頑張ってくれたので、予定よりずっと早く終わりました。本当にありがとうございました」
お疲れ様でした、そう委員会を閉めて倉庫に鍵をかける。
結局、英二くんは最後まで戻ってこなくて、あいつ、あのままサボリかよー、なんて他の委員達も笑いながら校舎へと戻っていく。
英二くん、やっぱりトイレじゃなかったんだ……
私に向けられたら怪訝な顔を思い出し、その瞳からはイラッとした様子が伺えて、やっぱり無神経だったよね……そうフーッと大きくため息をつくと、重い足取りで校舎へと向かう。
ポーン ポーン パシッ!
ふと私の耳に届いたテニスボールを打ち合う音に、思わず立ち止まり顔を上げる。
そっか、ここだと結構テニスコート、近いんだ……
委員会の時は倉庫から出てみても、みんなの話し声が結構あったし、私も集中していたから全然気がつかなかったけど、こうして一人になると、ボールの音がよく響いて、風が掛け声と声援を運んでくる。
気がついたら私はテニスコートの方へと歩き始めていた。
行ったところで何をしようという訳でもないんだけど、本当に何となく行ってみたいなって思ったんだと思う。
テニスコートが見えるところまで移動すると、コートの周りには沢山の女の子達が溢れていて、流石にあの中に入っていく気にはなれなくて、少し離れた部室の近くにある木の下からコートの様子を見学する。
私が知っている顔と言ったら、不二くん以外は、英二くんの友達の乾くんくらいかな、後輩の子も何人か見たことあるけど……
テニス部のみんなは一生懸命練習していて、すごく大変そうなんだけどそれ以上に楽しそうで、英二くんも中学の時はあの中にいて、彼らと同じようにプレイしていたんだろうな、なんて思った。
そのコートで楽しそうにプレイする英二くんの姿を思い描きながら、私はしばらくの間、その練習を眺めていた。