第22章 【カベノムコウ】
「申し訳ありません、遅くなりました」
会議室のドアをそっと開けて静かに中に入ると、一斉にこちらに視線が集まり、実行委員長が、小宮山さん、大丈夫ですか?そう声をかける。
大丈夫……って脚のことかな?そう思いながら、はい、もう大丈夫です、そう適当に返事をすると、実行委員長がそれは良かった、そう安心した顔をする。
それと同時に周りからクスクスと笑い声が聞こえ、んー?と思って周りを見回すと、みんなの肩が小刻みに震え、必死に笑いを堪えているように見える。
「みなさん、笑わないであげてください、小宮山さん大変だったんですから」
……どういうこと?そう不思議に思い、首を傾げながら英二くんの隣の自分の席に移動すると、みなさん、どうしたんですか?そう英二くんに問いかける。
するとそんな彼は、ギクッと小さく肩を震わせて、さー……どーしたんでしょー?と明らかに心当たりありますよ、と言ったようなひきつった笑顔で、私の目を見ずに答えた。
いやいや嘘でしょう!
今、明らかにギクって言ってたから!!
「……菊丸くん、一つお聞きしたいのですが」
「ほいっ!?」
「遅れた理由、なんて言ってくれたんですか?」
そう私が英二くんをじっと見て言うと、べ、別に何も変なこと言ってないぞ!そうムキになって答えるから、じゃあ、言えますよね?そう目を逸らさずに追求する。
「えっと、その……ただ、ちょーっと痛いから遅れるーって……」
「痛いって……どこがですか?」
「それは、その……腹、が……」
は、腹って……お腹!?そう私が驚くと同時に、会議室は耐えきれなくなったみんなの爆笑に包まれる。
適当にって言ったって、それって本当に適当すぎ!
あぁ、本当、今日はみんなに笑われる日なの?そう頭を抱えてため息をついた。