第22章 【カベノムコウ】
「小宮山さん、お弁当にあたったんでしょ?」
「トイレから当分出てこれないからーって、英二が言ってたぞ」
そう大笑いしている生徒達の声に顔が赤くなり、恥ずかしさと怒りとで身体がなわなわと小刻みに震えてくる。
そんな私をみた英二くんはヤッベー……というような顔をして、それからそーっと目をそらす。
「違いますっ!痛かったのは脚です!!」
そう思わず大きい声を上げて否定すると、そんな私が珍しいからか、みんなの笑い声がピタッと収まる。
「小宮山さん、ごめーん、ちょーっと調子に乗って面白おかしく喋っちった」
ふん、そんなテヘペロしたって効きませんから!
だいたい、脚がガクガクになったのだって英二くんのせいなのに!!
そう思って頬を膨らませると、顔の前で手を合わせて謝る彼を無視して、すみません、お騒がせいたしました、どうぞ先に進めてください、そう淡々と委員長を促す。
そんな私たちのやりとりを見たみんながまたクスクス笑いだし、それでは再開しますか、そう委員長が会議を再開する。
「小宮山さーん……ねー、小宮山さんってばー」
ふん、いつだって大人しく言うこと聞いてると思ったら大間違いなんだから!そうコッソリ声をかける英二くんを無視し続ける。
すると彼がフーッと静かにため息を吐いたから、思わず身体がビクッと跳ねて、心臓がギュッと痛みだす。
やだ、私、英二くんを怒らせちゃった……?
あれ以来、英二くんが私に怖い顔をしなくなったからって、調子に乗ってあんな態度とるなんて……
バクバクする心臓をおえながら、恐る恐る彼の顔を伺うと、あっと気まずそうな顔をした英二くんと目があって、そんな彼がパッと私の手を取って、それから机の下へと急いで隠す。
会議室の長机は反対側から見えないようになっているから、一番後ろのこの席では誰にも見られる心配はなくて、まさに教卓の下と同じ状況で繋がれた手にホッと胸をなで下ろす。
怒られなくて本当に良かった……そうギュッと繋がれた手に力を込めた。