第22章 【カベノムコウ】
あ、コレは完全に転ぶ……そう思ったその瞬間、耳元で聞こえたのは、危ないっ!と上げられた穏やかな声と、目に入ったのは私の身体を受け止める細くてたくましい腕……
あっと思って顔を上げると、そこにはきれいな不二くんの顔があって、きれいな、なんて男の子に対してどうなのかな?って思ったけど、それ以外表現しようがないほど本当にきれいな顔で。
それから、以前は自分がいっぱいいっぱいだったから気が付かなかったけど、コレは女の子達が騒ぐのも当然だな、なんていまさらながら納得して不二くんの顔をもう一度眺めた。
「小宮山さん、大丈夫……?」
そう不二くんに声をかけられ、自分がマジマジと彼を見ていたことに気が付いて、あ、重ね重ねすみません、そう言って頭を下げる。
思わず見惚れてしまいました、なんて言いそうになり、流石にそれは言えないよね、そう内心苦笑いをした。
そっと廊下に出て周りを見回して、誰にも見られなかったことを確認すると、良かった、あんな場面、誰かに見られたら何言われるか分からないもの、そうホッと胸をなで下ろす。
「すみません、なんか脚に力が入らなくて……」
そう言って脚をみるとまだ小刻みに震えていて、ふーっとため息を付いた不二くんが、ほら、英二が無理させるから!そう言ってもう一度英二くんを睨みつける。
違います、私が運動不足だから……そう慌てて不二くんに訴えると、小宮山さん、あんまり英二を甘やかすの、良くないよ?そう言って不二くんは苦笑いをした。