第22章 【カベノムコウ】
「……キミ達は僕に仲の良さを見せつけるために、わざわざこんなところまで呼びつけたの?」
突然、後ろから不二くんのそんな声が聞こえ慌てて振り返ると、開け放たれた扉に腕を組みながら呆れ顔で寄りかかる不二くんと目があった。
え、不二くん、いつの間に?って急いで英二くんから離れると同時に、それよりさっきのキス、思いっきり見られてた?そう思うと恥ずかしくて、カァーッと火照る頬を慌てて手で覆い隠す。
焦る私とは対象的に、英二くんは何でもないことのように、ゆっくりと私の肩に回した手を離して立ち上がり、不二、サンキュー、そう言って不二くんの方へと歩み寄った。
「何度もノックしたのに応答がないから、開けてみたらこの有様とはね」
そう言って不二くんは、大きなため息を落とし、英二くんはゴメーン、つい夢中になっちった、そう言ってぺろっと舌を出す。
はっ、英二くんの得意技のテヘペロだ!そう思って不二くんをみるも、私には効果覿面のその顔も、彼には一切通用しないようで、冷ややかな目のまま英二くんを一瞥する。
「あ、あの……申し訳ありません、せっかく来ていただいたのに……」
そう言っておずおずと立ちあがり頭を下げると、小宮山さんが気にする必要ないよ、全部英二が悪いんだから、そう言って不二くんは一変して爽やかな笑顔をみせた。
「なんだよ、ひでー、不二、今のは小宮山だってノリノリだったじゃん」
「そういう問題じゃないよ、だいたいこんな場所で……また彼女に無理させたね?」
「そ、そんなことより、ほら、小宮山、委員会、委員会!」
そう言って英二くんは、不二くんのなんかよく分からない迫力のある笑顔から逃れるように廊下に出ると、携帯の時計を指差しながら急いでその場で駆け足をする。
そ、そうだ、今はとにかく委員会!そう思って、はいっ!とノートと筆記用具を持って駆け出すと、その瞬間、まだ覚束ない足がカクンとなって前のめりに倒れこんだ。