第22章 【カベノムコウ】
「むー……不二のやろー、オレには『自分で何とかすれば?』とか言って全然相手にしてくんなかったくせにー!」
私から携帯を受け取りながら、英二くんはそう言って頬を膨らませる。
それから、小宮山も不二しか頼れないって、オレは頼りになんないってのー?そう不満げに言うものだから、そんな様子が可愛くて、だって英二くんのせいでこうなったんじゃないですか、そう言ってクスクス笑う。
元の場所に戻ってノートと筆記用具を手に取ると、まだ、脚、キツいな、そう思ってフーッとため息をついて座り込む。
すると英二くんも私の隣に座り、その手を肩に回してくれたから、嬉しくてそっともたれ掛かった。
「委員会のクラス司会は頼りにしてましたよ、英二くん、意見まとめるの上手ですし」
そう私が英二くんに頬を寄せてふふっと笑うと、一瞬、そーだろーって満足げな顔をした英二くんは、すぐに、ん?って眉間にしわを寄せる。
それから何で過去形?って聞いてくるから、今日のことで信用がた落ちです、そう言ってまたクスクス笑った。
「……それって教卓の下でチューしたこと?それとも朝練嫌だって文句言ったこと?」
そう私の顔をのぞき込む英二くんに、言うまでもなく前者ですって即答すると、英二くんはちぇーっと頬を膨らませ、だって小宮山いじめんの楽しいんだもん、と私の頬にチュッっと音を立ててキスをした。
「分かっていますよ?そのイジワルにいつも振り回されていますから」
そんなキスが嬉しくて、それからくすぐったくて、そう英二くんの顔をのぞき込むと、私の髪を手でとかすように撫でながら、今度は唇に短いキスを何度も繰り返す。
英二くん、大好き……唇が重なる度に満ち足りていく喜びに幸せを感じながら、彼の制服の裾をギュッと握り締めた。