第22章 【カベノムコウ】
「もしもし、あ、不二ぃ、悪いんだけどさ、ちょっと助けてくんない?」
英二くんが電話をかけたのは不二くんで、不二くん!?そうびっくりしたんだけど、でも私達が頼れる人なんて彼だけで、当然の選択か、そう納得して英二くんの電話が終わるのを待つ。
「今すぐさ、北校舎階段下の物置んとこ、きてくんない?」
「それがさ、入ったはいいけど、いつ出たらいいか分かんなくてさ」
「まあ、そーなんだけど……んなこと言わないで頼むってー!」
そんな英二くんのセリフに、不二くん、あまりよい返事をしてくれてないんだな、そう思ってフーッとため息を付く。
こうしている間にも、委員会までの時間は刻一刻と迫ってくる。
どうしよう、もう時間なくなっちゃう……腕時計を眺めながら、焦りから速まる心臓をギュッと抑える。
すうっと大きく息を吸い込み、意を決して英二くんを見上げると、袖をそっと引っ張り、貸してください、そう言って手を差し出す。
そんな私の様子に一瞬きょとんとした英二くんだったけど、直ぐに私の意図を理解したのか、不二、ちょっと待ってね、そう言って私に携帯を手渡した。
「もしもし、小宮山です」
『小宮山さん!?』
「勝手なお願いで申し訳ありませんが、助けていただけませんか?委員会の時間が迫っているんです」
私がいることは当然分かっていただろうけど、まさか変わるとは思っていなかったのか、ちょっと驚いた声で私の名前を呼んだ不二くんは、小宮山さんも大変だね、そう電話の向こうで苦笑いをした。
『すぐにむかうよ、タイミングを見て合図すればいいかな?』
「はい、本当に申し訳ありません。頼れる人、不二くんしかいなくて……」
『ふふ、ソレは光栄だな』
よろしくお願いします、本当に助かります、そう言って通話を終わらせると、英二くんに携帯を返しながら、着いたら合図してくれるそうです、そう言って笑顔をむけた。