第21章 【カワッタコト】
「別に構いませんが、それでも菊丸くんが朝練に参加することに変わりはありませんよ?」
そう言う私に、不満げな、でも不思議そうな顔で、なんでさ?って英二くんが聞くから、実行委員は練習の補佐も仕事ですから当然です、と答える。
それどころか、更衣室と倉庫の鍵当番もあるから、私と英二くんは朝練習に当たっている他のクラスの実行委員と一緒に、7時20分集合なんだけど……さすがに今は黙っておこう。
「ついでに言うと、朝の時間帯に割り振られたのは、菊丸くんがくじ引きの日を勘違いしてすっぽかしたからですが?」
私がそう言うと、英二くんはヒイッと声を上げ、しまった、という顔をする。
「他にまだ何か?」
「いえ、何もありません!」
そして英二くんは、みんな朝練ガンバロー!と先程までとは打って変わってやる気万欄な態度を取り出し、クラスが笑いに包まれる。
そんな様子に、本当に英二くんはクラスのムードメーカーだなって微笑ましく思いながら、他になにもないのならこれで終わりにします、そう会を終わらせる。
自分の席に戻るため、名残惜しい気持ちを押し殺してそっと繋がれた手を引くと、離れる直前の一瞬だけ英二くんの手にぎゅっと力が込められた気がした。
ゆっくりと離れていく英二くんの手を少し寂しく思いながら、そっと自分の手を握りしめ、彼に背中を向けてからこっそりその握りしめた手に唇を落とした。