第21章 【カワッタコト】
自分の席に戻ると、黒板に書いた自分の文字をノートに写しながら、英二くんの手の温もりの余韻に浸る。
みんなの前でこっそり行われた2人の秘密に、ゆるんでしまりのない顔を髪の毛で必死に隠す。
行為以外で手を繋いだのは当然始めてで、もっと凄いことをもう数え切れないほどしているというのに、ずっと胸のドキドキが止まらなくて、もう一度その手にそっとキスをする。
「小宮山、最近いい味出してるよなー」
休み時間になると、後ろの席に集まっていた男子数名が私に声を掛ける。
話しかけられたことに戸惑うとともに、いい味の意味が分からず不思議に思う。
私はいつもこうですが?そう彼らに答えて前を向くと、彼らのニヤニヤとした笑顔に心臓がいやな鼓動を打ち始める。
「なあなあ、小宮山の彼氏ってどんなやつ?」
そう言う小林くん達の言葉にピクッと身体が跳ねて、心臓が壊れるかと思うほどの激しい動機が襲う。
……見えてる……よね、やっぱり……
頻繁につけられる首へのしるしは、コンシーラーとファンデで誤魔化したりしてるけど、それでもカバーしきれてないのも事実。
今まで不二くん以外にその話題に触れられたことがなかったから、こうもはっきり言われると、どう反応して良いかわからなくなる。
英二くんは彼氏じゃないし、いないと言えばそれはそれで問題だよね……
結局、どうして良いか分からないまま、なーってばー、そう声を掛ける彼らを無視して本を読み続ける。
私、周りからいったいどう見られてんだろ……そう思うとさっきまでの幸せな余韻は台無しで、憂鬱な気持ちでいっぱいの心の中で小さくため息をついた。