第4章 【オソレトフアン】
空色の明るいワンピースを脱いで学校のセーラー服に着替える。
制服の裾の長さはピッタリ膝まで規定通り。
髪をとかしてきっちりと三つ編みに結ぶ。
引き出しからとりだした黒縁の眼鏡を掛ける。
本当は毎日トリートメントを欠かさない、自慢のサラサラストレート。
視力だってさほど悪くないから眼鏡なんて必要ない。
それでも鏡の向こうに映っているのは、いまどきこんな女子高生いる?っていうほど地味な私。
「もう少し女子高生らしい格好でも大丈夫じゃないの……?」
朝食の席でそうお母さんが少し寂しい笑顔をむける。
いいの、これで、そう苦笑いをしてご飯を口に運ぶ。
そう、私は毎日この格好で学校へ登校する。
理由はとにかく目立ちたくないから。
いや、ある意味目立ってはいるのだけれど、人が苦手な私は、いつもこんな格好をして本を片手に「誰も話しかけないで」オーラを醸し出している。
浮きまくっているのはわかっている。
みんなが遠巻きにみてクスクス笑っているのもわかってる。
それでもそんなクラスメイトから少し離れた位置で1人過ごす時間が好き。
もう一度鏡を見て大きく深呼吸をする。
大丈夫……菊丸くんは普段のこの私しか見ていないもの……
我ながらまるで別人だし、あの一瞬で、あれがこの私と同一人物だって気が付くはずがない。
大丈夫、大丈夫、そう自分に言い聞かせ、重い足取りで学校へと向かった。