第20章 【ソシテワタシハ】
「店長さん、こんにちはー!」
自宅に帰る途中、例のペットショップへと寄り道する。
あんなにサービスしてもらってお礼も言わないなんて申し訳ないし、第一、店長さん、小心者なところあるから心配してそうだし。
挨拶しながら店内にはいると、奥から慌てて店長さんが飛び出してくる。
璃音ちゃん、よく来てくれたね!そう涙を滲ませる店長さんに思わずクスクス笑ってしまう。
それであの後、菊丸くんとは……そう言いにくそうに聞いてくるから、何も変わらないですよ、そう苦笑いしながら答える。
「もともと英二くん、私の気持ちに気が付いていたし、恋愛対象に見られてないことも分かってたんです」
そう言いながらオモチャコーナーから猫じゃらしを数点選んでカウンターに置くと、店長さんの鼻をすする音がして、え?って思って顔を上げると、やっぱりそこにはウルウルしている店長さんがいた。
「な、なんで店長さんが泣くんですか!?」
そう慌てる私に店長さんは何度もごめんねーと謝り、それからコレのお代はいいよ、なんて言い出すから、そんなことばかりしてたら本当にお店潰れちゃいますよ?なんて苦笑いしてお金を払う。
経営が苦しいのはきっと人情に厚いからじゃないですか?なんて言ってクスクス笑うと、璃音ちゃん、こんなにいい子なのに菊丸くんめー!と店長さんが拳をふるわせて肩を怒らせるから、コレばっかりは仕方がないですよ、そう言って笑顔を見せた。
「よしっ!菊丸くんの代わりに僕が璃音ちゃんを幸せにしてあげるよ!」
「もう、店長さん、その冗談は笑えませんよー?」
そんな会話にまたクスクス笑いながら、それじゃ、また来ますね、そう挨拶をしてお店を後にした。