第20章 【ソシテワタシハ】
「小宮山さん、僕のせいで迷惑をかけたね」
教室を後にすると、続いて出てきた不二くんがそう話しかけてきたから、不二くんのせいじゃないですよ、そう前を向いたまま会話を続ける。
「凄く助かりました。私、とっさに言葉が出てこないので……」
考えたあげく出てきた言葉がアレですから……そう言って頭を下げると、英二といるときと同じでいいのに、そう言って不二くんはクスクス笑う。
慌てて周りを見回して、誰かに聞かれなかったか確認して、それは言わないで下さい、そう彼を睨みつけると、ゴメンゴメンと不二くんはまた笑った。
全く、不二くん、わざと楽しんでない?全然違うように見えて実は英二くんと不二くんって似てるのかも……?そんな風に思いながらため息を付いた。
「ところでさっきの話なんだけど、本当に考えてくれないかな?」
そう不二くんが言うから、とっさの言い訳じゃなかったんですか?そうびっくりして答えると、半分はね、と不二くんはクスッと笑う。
「新体制から会長に就任することになってね、テニス部の方も部長になりそうでちょっと大変なんだ」
それは……本当に大変ですね、何で両方引き受けるんですか?そう不思議に思って問いかけると、それをあっさりやってのけた友人に負けたくなくてね、そう言って不二くんは目を開いて笑う。
それって噂に聞く手塚選手のことだろうな、なんて思いながら、英二くんのことにしても、他の人のことにしても、そんな風に思える友人がいるって凄いな、なんて思ってギュッと心臓をを押さえつけた。
「小宮山さんは委員になれているし、キミが手伝ってくれると心強いんだけどな?」
体育祭実行委員もあとちょっとだし、学級委員も一学期だけだよね?そう言う不二くんに、ソレはそうなんですけど……そう視線を伏せて答える。
不二くんには申し訳ないこともしたし、協力してもいいけれど……でもよりによって生徒会執行部か……
申し訳ありませんが、ご期待に添うことはないと思います、そう言って頭を下げて、その話を強制的に終わらせると、あとは彼にかまわずにそのまま昇降口へと黙々と歩いた。