第20章 【ソシテワタシハ】
ペットショップをでると本屋さんで問題集を買って、その後はスーパーで買い物を済ませる。
フルタイムで働く母の負担を出来るだけ減らそうと、いつも買い物は私が済ませてしまう。
「あら、璃音ちゃん、お帰りなさい、いつも偉いわねー!」
ご近所の奥さんに笑顔で挨拶し、最近ますます可愛くなっちゃって、さては彼氏でもできたわね?なんて言われて、違いますよーなんて笑顔で切り抜ける。
「コラッ!ネコ丸、ダメ!ダメってば!」
自宅に帰り洗濯物を取り入れると畳む側からネコ丸に邪魔されて、なかなかはかどらないんだけど、そんな時間もまた楽しかったりして、もう、ちょっとだけだからね?とさっき買った猫じゃらしでちょっとネコ丸の相手。
「ね、ネコ丸、英二くん、また来てくれるって」
そうネコ丸相手に話しかけてはニヤニヤする。
私にとって話を出来る人って少数で、しかも話せる内容も限られていて、だから悩みも愚痴も弱音も、なんでも吐き出せるネコ丸は私の唯一の親友であり大切な家族。
「でもね、私のことは絶対好きになってくれないんだって……」
ちょっと声のトーンを落とし、小さくため息をつき、ううんと首を横に振る。
身体だけでいいって気持ちは本当なんだし、自分で決めたんだから、いつまでも気にしちゃだめだよね。
人間、誰しも思い通りにならないことや、努力ではどうにもならないことがあって、そんな挫折を繰り返しながら、どこか妥協点を見いだして前に進んでいかなきゃ行けないわけで。
その妥協点が私の場合、セフレとして英二くんの側にいると言うことで、もういっそのこと、セックスフレンドって友達認定されたと思えばいいんじゃない?
こうなる前までの、義務的な挨拶をするだけの関係に比べれば大前進ということで……あ、私、今、珍しくポジティブー……って、ちょっとネコ丸、ちゃんと聞いてる?
私の長い独り言を無視して夢中で遊ぶネコ丸の頭を、隙あり!そう言ってコツンと軽く小突くと、目を丸くして後ろに飛び跳ねたから、そんな様子が可笑しくてクスクス笑った。